見つけた方はほくそ笑んでください。

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現在私がいるのは九番隊副官室の前。
用事がない限り、行く事のない場所。
勿論今は用事があるから来ている訳で。
用事はただの書類確認。
なのに、これが異常に緊張する。



扉を叩く前に、深呼吸を一つ。
ただ入って、挨拶して、書類に捺印してもらうだけなんだけど、どうにも慣れない。


こんこんこん。


「九番隊第五席、 です。書類を確認して頂きたく参りましたが檜佐木副隊長はご在室でしょうか」

『あぁ、入れ』


やっぱりここでも深呼吸。
いい加減慣れろ、自分。


「失礼します」


すっと開く扉の先に待つのはこの部屋の主。
目つきが悪くて刺青なんかしてて顔に傷痕があってそして多分その傷のせいで右眉が半分なくて
明らかにガラが悪い(酷)、檜佐木修兵。
ぺこりと一礼して部屋に入り、彼のもとへ進む。


「こちらの書類の確認をお願い致します」


そう言って紙の束を渡す。
檜佐木副隊長は一言『あぁ』とだけ答えて、黙ったまま書類に目を通し始めた。

黙々と書類を読む彼。
私は当然黙ったまま。


―――この空気が苦手なんだよなぁ……


そう、心の中で呟く。
部屋の中に二人きり、しかも相手は副隊長。
緊張しないわけがない。
それに目つきが悪くて刺青なんかしてて顔に傷痕があってそして多分その傷のせいで右眉が半分なくて
明らかにガラが悪い(2回目)から、やっぱり怖く感じてしまう。
けど、酷いわけじゃないし見た目に反して(酷)優しいし…
かっこいい、と騒ぐ人がいるのも判るといえば、判る。





まぁ、私もちょっとだけ、ほんのちょっとだけ憧れてる人間ですけど。
やっぱりなんていうか、立場が違うし、ねぇ。


。」

「え、あ、はいっ?!!」


何ボーっとしてんだ、とばかりの視線を向けられる。
…まさか副隊長のことを考えてましただなんてイエマセン。


「な、何でしょうか?何か書類に不備が?」

「いや、不備はない」

「なら何でしょう?」

の下の名前は『』ってんだな」


…………は?


「は、はい、そうですが……」


肯定すると檜佐木副隊長はふぅんとだけ呟き、また黙々と紙面の字に目を走らせ始める。
な、なんだったの今の質問は……








「これで全部だな」


ぽん、と最後の書類に印を押し、書類をこちらに渡してくる。
受け取ったそれらをぱらぱらとめくり、全てに捺印されていることを確認して腕に抱える。


「はい、ありがとうございました」


そうして退室しようとしたところに、扉を叩く音。
部屋主が声を出す前に、呼びかけとともに扉が開かれる。


「修兵さーん、昼っすよー飯行きましょー」

「恋次、返事を待って開ける位できねぇか」

「まぁまぁ、いつものことじゃないっすか」


そう笑いながら入ってきたのは六番隊副隊長の阿散井恋次。
あまり見知った仲ではないので、無難に会釈と挨拶をしておく。
見知った仲でも、立場上そうしないといけないけど。


「お疲れ様です、阿散井副隊長」

「あ、まだ仕事中だったんすか。悪ィっすね邪魔して」

「いいえ、ちょうど今終わりましたから」


「お気になさらず」とにこりと伝える。
昼休憩になったんだから、早々に部屋を出よう。
用事も終わってるし、いる意味もないし、いつまでもいたら悪いし、私もお昼食べないといけないし。


「それでは、失礼致します」


入ってきたときと同じように一礼し、阿散井副隊長にも会釈をして扉へ向かおうと向きを変えた瞬間。





耳に飛び込んできた自分の名前。


「……………は?」


我ながら、すごく間抜けな返事を返したと思う。間違いなく。
っていうか、今、檜佐木副隊長、よね。『』って呼んだのは。


「ひ、檜佐木副隊長、今なんて………」

って呼んだんだ。昼飯お前も付き合え」


あぁ、昼飯…………
………
…………………
はい?!!


「え、いや、あの、お、お邪魔になりますしそれに私が副隊長たちと食事なんて?!!」


立て続けに起きたことに頭が混乱している。
いや、混乱するなって言うほうが無理だ!!
いきなり『』って下の名前で呼ばれてついでにお昼を一緒?!
一体どんな展開なのこれは?!


「俺は構わないけど。えーっと、ちゃん?」

「恋次もこう言ってることだし、ほら行くぞ」


言うが早いか彼は腕の中の書類を取り上げ、机の上にばさりと置いた…というか、放った。
最早事の展開についていけない私を他所に、二人は副官室を出ていく。
とりあえず机上に散らばった書類をまとめつつ、
副隊長二人と一緒なんて嬉しいと言えば嬉しいけど緊張するしどうにか断れないかなぁ…
なんて思っていると、部屋の外から呼びかける声。


「早く来いよ、

「……………はい……」


断る口実も見つからないので、諦めて部屋を出る。
うぅ、何故こんな展開に…?


「すみません、お待たせしました」

「いーっていっーって」


一応謝罪をすると、阿散井副隊長は気にも留めてないようで笑いかけてくる。
良かった、短気な人じゃなくて…
と、胸を撫で下ろして落ち着いたところに。


「よし、行くか」


との檜佐木副隊長の一言と、頭にぽんと置かれた手。
とは言っても彼は歩き始めたから、すぐに手は離れていったけど。




あぁ、何か顔が熱いのがわかる。
今日は一体何の日なんだろう。


「ほら、早く来ねえと置いてくぞ」

「す、すみません……」


…もう、何の日かとか言うのは置いといて。
なんだか、檜佐木副隊長のせいで憧れという意識の仕方がちょっとだけ、変化しそうです。



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檜佐木の口調なんか判るか畜生め恋次の口調なんか判るか畜生め(ダマレ)
俺的設定は双方がほんのり気になってる相手ということd(ry)
ていうか何が書きたかったんだ俺。